今から90年前に開館した神奈川県立金沢文庫は、たった二人の専門職員によってはじめられました。
一人は初代文庫長・関靖氏(1877~1958)、もう一人は神奈川県初の司書・熊原政男氏(1908~1980)です。
開館当初の「精神文化の育成」という設立目的は、第二次世界大戦中、戦意高揚に利用され、戦後の金沢文庫は難しい局面を迎えます。このとき二代目文庫長に就任した熊原政男氏は、郷土意識を盛り立て戦後復興の原動力とする活動を積極的にして、危機を乗り切るという「秘策」を繰り出します。
開館以来収集してきた近世の版本類を、絵図・地図、金沢八景、徒然草といったテーマのもとにコレクション化して、神奈川県近郊の催事場に出開帳し、関連書籍を出版して、金沢文庫をおおいにアピールしたのです。